2010年12月31日

濱田啓介「近世文学・伝達と様式に関する私見」

 空前絶後の本である。資料の博捜、様式への徹底的こだわり(造本自体も)、多ジャンルへの目配り、細部への周到さ。。。今後永く、後世の研究者から引かれ、意識されることは間違いない。

 ある研究会で、著者とお昼を買いに出て、雑談となった折、「本を出すのには念には念を入れて」と自戒するようにおっしゃっていたのが、忘れられない。ちょうど、本書の校正に入っておられたのだと聞いている。

 装丁もそくっりの前著の編集者、八木俊樹さんは、京大の先生方が何かと理屈をつけては予算をとってきて、保護された、伝説のお方である。古き良き京大の伝統が、本書には流れ込んでいるのだ。

 国語学にもつながる、言語の伝達機能への関心の深さも、特筆もの。ちょうど、近世の文学研究と国語学研究の架橋を提案するような論説を発表する場を与えられていたので、刊行が待ち遠しく、締め切りに間に合って本当に幸運だった。

 内容的に、私にとってホットなのは「幕末の写生歌」。子規の写生歌の前提が、幕末歌に用意されていたことを、表現様式から迫った圧倒的な仕事である。では、俳諧はどうだったのか。幕末歌の多様な世界の見取り図はどう近代へつながるのか。解決すべき大きな問題を提示してみせるだけの大きさが、本書のそこここにある。
posted by 雑食系 at 10:46| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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