2011年01月15日

眞壁仁「徳川後期の学問と政治」

 後生畏るべし。読後の感想でこう感じた本はそうはない。しかし、この本にはやられました。松平定信以降の江戸後期の学問所儒学とその周辺は、解明が待たれる分野ながら、あまりにその対象がデカすぎて、瞥見した立場からすれば、大海を泳ぐようなものと思っていた。

 ところが、その中心に位置する古賀家三代の資料を細大漏らさず調べた上、その周辺まで洗って、近代外交への扉を開いたその過程を詳細に位置づけた、読後にパースペクティブを得た時の、爽快感も滅多にないものだった。

 政治学の人が、思想史に取り組むと、丸山学派のようにヘーゲルで図式化しようとする感が強すぎて、文献屋からは評判がよくない。ところが、本書は文献への徹底した読み・目配りと、見通しのよさとが同居している。

 江戸幕府後期の学制改革から、西欧世界への知的関心の拡がり、さらには幕末の古賀謹堂の海防論・通商積極論の位置づけまで、政治史・思想史・外交史の書き換えを迫る画期的な成果だ。学問所を、古色蒼然としたイメージから解き放ち、開国に耐えうる幕末外交の思想的基盤が用意したことを解明したことが大きい。

 30代後半で、筆者はこれをものして、角川源義賞を得た。受賞は当然だと思う。江戸文学研究でも、後期の雅文芸を対象に選ぶ人間は必読だ。かつて日野龍夫氏が丸山真男を意識したように。

 

 
posted by 雑食系 at 00:14| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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