2011年01月18日

加藤陽子「戦争の日本近現代史」

 最近、近現代の軍事史には優秀な女性研究者が多いと聞く。近代文学では乱歩の女性研究者が増えてきているとも聞いた。共に、かつてなら、女性研究者が対象としない分野であったが、事情は変わってきたのだ。

 文禄・慶長の役にたいする、幕末から明治初年の理解の仕方に関心があって、本書を手にとった。しかし、新書のフレームを超えた情報量の豊富さと、資料を踏まえた理路整然とした議論に「啓発」されるところが多かった。

 まず征韓論は、朝鮮蔑視というより、日本国生存の危機意識から生まれた切羽詰まったものであった、という議論。従来の左翼系日本史学では、戦後思想の立場から裁断する議論ばかりだったが、それでは見えなくなってしまうものを浮かび上がらせている。

 日清戦争期のこの戦争についての新聞小説を読み解くうえでも、本書の議論は大いに参考になった。本書が説くところの、シュタイン以来の朝鮮利益線論に加えて現れる、明治維新の輸出を妨げる勢力との対決という新たな新聞論調が、文禄・慶長の役関係の歴史小説にも持ち込まれていたからだ。

 本書は冒頭、戦争を学ぶ意味を問うて、国民が本来嫌がる戦争を主体的に受け止める転機とは何か?歴史は出来事であると同時に、読む側の意識によって「問い」にもなりうるという議論を展開する。私はこれを、江戸の軍記・軍書でやっている。
posted by 雑食系 at 00:24| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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