2011年01月27日

成田龍一「司馬遼太郎の幕末・明治」

 司馬遼太郎は高校生くらいからよく読んだ。「竜馬がゆく」や「坂の上の雲」のような代表作より、「関ケ原」や「翔ぶが如く」のような政治的にダークな面を描いたものが好みだった。好みは人間が出ます。

 しかし、江戸の通俗歴史読み物をここ10年研究するようになると、全く司馬に対する見方が変わってきた。歴史小説=歴史読み物は、過去を鏡にして現代を投影した文学だ、と。

 司馬が亡くなって十年。やっと、その神話化から逃れた、しかし、一方的に批判するのでもない、冷静な見方をする本が出た。

 本書は代表作の「竜馬がゆく」「坂の上の雲」を取り上げ、司馬が書いた、あるいは書かなかった幕末・明治、作品が発表された1960〜70年、そして現代の3つの時間軸から論じている。

 司馬は満州・本土決戦の戦車隊にいた戦争世代であり、右寄りの「産経新聞」記者であり、左派がアカデミズムを独占した日本史学を後目に、高度経済成長期の右派史観を基本に置いた。

 何より、筆者は、「史実」か「虚構」かと言った歴史学者が今でも陥りがちな二項対立には、この場合意味がない、と断じている。むしろ、大事なのは作家であれ、歴史であれ、記述の文法だ、と。
この1点を理解するかしないかで、私は歴史学者の値打ちを判断している。
posted by 雑食系 at 00:32| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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