2011年02月21日

中江兆民「三酔人経綸問答」

 酒席の議論は、しまりがない。哲学などは酔って議論しないだろう。しかし、文学や政治は違う。酔った方が面白い議論ができる場合がある。そういうサロンとなった酒場は多々聞く。

 一旦酔えば、政治・思想を語ってとどまるところのない南海先生のもとに、洋学紳士と豪傑君という全く対照的な二人が訪ね、酔を発して談論風発となる。

 洋学紳士は、純粋反戦思想の持ち主の理想主義者。対する豪傑君は、実力でアジア侵略も辞さない現実主義者である。今でも政治思想を大きく分ければこの二つの潮流になろう。

 ネオコンのブッシュ・チェイニーと価値外交のオバマ。その源流は、世界戦略のシオドア・ルーズベルトと、国際連合のウィルソンまで遡れる。

 文学も理想派と現実派に分かれよう。漢詩・和歌・俳句・読本は前者、浮世草子・洒落本・黄表紙・人情本・滑稽本・川柳・狂歌は後者。江戸文学にも近代のような、没理想論争はなかったのだろうか?ないなら、自分で書いてみるのも一興だ。
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2011年02月19日

村田晃嗣「プレイバック1980年代」

 どうも今の政権はもたないらしい。そこで、ふとこの本を思い出した。80年代は私の20代の10年であり、ちょうど大学・大学院生時代に重なる。1980年、大平総理が選挙中急死し、弔い合戦で自民党は大勝。

 あとを継いだ鈴木首相は、日米安保は軍事同盟ではないと発言して結局、退陣に追い込まれた。サミットの時、サッチャーからなんでこんなわけのわからない人が首相をやっているのかと、こきおろされた。

 この間の経緯は、鳩山退陣に似ている。しかし、この後、80年代は中曽根長期政権ができて政治は安定、経済はバブルを迎え、社会は軽薄な時代だった。

 大平氏は、自民党の内紛で命をすり減らした。今民主党も内紛しているが、おそらく選挙に負けてバラバラになってゆくだろう。この点も異なる。

 どうも今年は、この後の10年を決める政治の年になりそうだ。本書は小泉退陣の2006年、出版された。それから5年の混乱の意味を考えるにも、本書のような、政治・経済・世相を総合して10年単位でみてゆく思考が必要だと思う。
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2011年02月18日

西村睦子「「正月」のない歳時記」

 労作である。副題は「虚子が作った近代季語の枠組み」。虚子は「ホトトギス」で句の選を行いながら、新季語を立て、弟子を競わせ、俳壇を経営・制覇していった。

 その過程を歳時記を丹念に追い論証したから「労作」なのである。一番興味深いのは、大正期客観写生を大衆向けに説いているときは、太陽暦に従いながら、昭和に入って秋桜子らが反旗を翻すと、旧暦にもどして、「花鳥諷詠」を歳時記から実践していった。

 新季語の衣に、江戸以来の俳句の伝統をかぶせて、新興俳句に対抗したのだ。虚子の戦略の鋭さと、さりげなくそれを実行してゆく図太さが浮かび上がる。結果、新歳時記から「正月」は消えたのである。

 ただし、本書には大きな欠点がある。江戸の歳時記や季語の知識がないことである。ご本人も歯がたたないと正直に吐露されている。この角度からの再検討はどうも私自身の仕事になりそうだ。
posted by 雑食系 at 07:37| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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