2011年02月05日

辻惟雄「奇想の系譜」

 ちくま学芸文庫版が出たのが2004年。私の持っているのが2006年刊の7刷。今はもっと出ているだろう。初版は1970年、美術出版社から。1988年にぺりかん社から新装版が出、これでその存在を知った。ぺりかん社版も刷を重ねた。

 本を出す人間にとっては、この経過は醍醐味であろう。それだけ本書は美術研究の歴史を変え、一般にも影響力を持ち、時代に乗った。「安全無害に消毒された江戸時代絵画史をスリリングなものにしてやろうという邪心」が、執筆動機だと言う。

 若冲を筆頭に今やここで取り上げられた6人の画家は展覧会の主役となった。辻氏の功績でもあり、時代にあった証拠である。今日演習で、フェノロサが肉筆だけを認めて版画は相手にしていなかったと平気で発表していた。まだまだ「安全無害」な江戸時代絵画史の感覚は残っているらしい。

 美術界ほど権威的な世界はない。池田満寿夫は芸大に落ち続けて、版画に落ちぶれた口だ。そんな感覚が生きている世界なのだ。辻氏の奇想の画家のコンピレーションは、そういう体質への風穴であったように思う。

 ちなみに、フェノロサが北斎を評価していたことは最近報告がある。狩野芳崖など肉筆でも、北斎や広重に近く、遠近法・色の対比・大胆な構図が共通する。かえって、子規のような絵の素人の方が、遠近法や色の対比という子規風写生の句の方法を、洋画とともに広重ら版画作家から学んでいる。絵の雅俗の別は、すぐ権威化する。いや文学もそうか。
posted by 雑食系 at 00:18| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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