2011年02月06日

十川信介「近代日本文学案内」

 最近、文学研究者によるスタンダードといえる、息の長く残りそうな仕事は少ない。その中で、本書は出色の出来である。

 本書は三本の柱からなっている。@近代日本の基本思想である立身出世、Aそこと対立する他界・異界、B近代に新たに登場した交通・通信手段、の3点である。

 現代でもおおむねそれは変わっていない、と思う。@は日本の弱体化で影が薄くなっているが、受験によるヒエラルキーはまだ残っているし、Aはアキバやオタク文化にそれを求めることができる。Bは、ネットの新潮流、クラウドやソーシャル・ネットワーク、携帯電話などを想定すればよい。

 @の最後に故郷を求める心を挙げている点も共感できた。ノスタルジーとしての愛も、攻撃すべき旧態依然たる存在の問題も、愛憎相半ばして文学のテーマだった。

 今書いている子規論でも、@政治家を目指した子規、Aそれに挫折して日常美を求めた新俳句、B新聞記者としての子規派の全国展開とぴったりあてはまる。

 教科書的な文芸思潮云々はまずおいてしまう感覚が、本書の新しさでもあり、現代性でもある。
posted by 雑食系 at 00:47| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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