2011年03月04日

山本常朝「葉隠」

 色々な必要があって、久しぶりに読んでいる。何分大部の書物なので骨が折れるし、世間一般のイメージと違って、多様な内容と問題を含む書物なので、こちらの周辺知識が広くないと、扱いきれない大きな対象だ。

 ひとつは諸本・成立の問題。よく引かれる武士道教訓は巻二までで、残りの九巻は、鍋島武訓聞書なのだが、そこには後世のものが混じっているのでは、という問題がある。引用された軍書を手掛かりにそこを探ってみることは大切だ。

 次に本書全体の評価だ。武士道教訓の分量が少ないなか、この教訓を分量の多い鍋島武訓聞書のなかでどう位置づけるか。むしろぞんざいに扱われてきた内容を、当時の軍学の文脈の中で整理することで、武士道教訓の解釈にも新たな光が当てられる可能性がある。

 3つ目に、常朝は、和歌を嗜んだ。忍ぶ恋の対象である主君光茂が和歌に執心したせいでもある。武士道を「忍ぶ恋」に例えて説明した意味、葉隠の書名が和歌からきているのではといった問題、聞書をした田代陣基との和歌・俳諧の交流の葉隠への影響など、これも重要な課題だ。

 4つ目に、佐賀藩内の他の聞書や、幕末の葉隠研究の様相がある。葉隠が鍋島論語となり、それを資料を使って注釈しようという動きなど、本書の古典化の秘密がそこにある。いやあ、これは1冊の本になりますなあ。
posted by 雑食系 at 08:33| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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