2011年03月10日

小池喜明「葉隠 武士と「奉公」」

 いい本だ。うそのない本だからだ。「葉隠」は大部の書なのに、その一部分だけを取り出して、拡大解釈するものが多い。その中で、本書は、全体に目配りし、丁寧に読んだうえで、通説を大胆に問い直す。

 本書の執筆動機は「殉死」であるにもかかわらず、その語はない。「武士道」を語りながら、「奉公人」の語に多くが置き換えられている。こういう疑問から出発している点も、手を抜かない点で正直だ。

 「葉隠」のダイジェストではなく、直接読んでみれば、「死ぬ事と見つけたり」という有名な勇ましい論調よりも、身だしなみや言葉遣い、酒の飲み方や前日の仕事の準備まで、こまごまと書いた、マナー本、あるいはマニュアル化した自己啓発本の性格を知って、読者は驚くはずだ。

 それというのも、口述者常朝の日常の業務は、和歌に執心した藩主の秘書役であり、武芸ではなかったことや、小禄から家老なみの発言権を得るほどに出世を遂げたことなどが大きい。こういう常朝個人の経歴から、地に足のついたところで、「葉隠」の本質に迫ってゆく。
 
 この地味さと丹念さは、常朝とともに著者の性格でもあると見えてくる。
posted by 雑食系 at 08:05| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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