2011年04月04日

苅部直・片岡龍「日本思想史ハンドブック」

 企画力が際立つ本としては、近年最高のものと評したい。専門的な最前線の知識を一般に紹介する。言うは易く、実行は大変な困難を伴う。本書は見事にそれを果たしている。

 まず出版編集者への説得が必要。彼らが伯楽でないと、つまりいい本が想像できる力を著者から読み取らないといけない。新書館には、他のシリーズを見ても、いい編集者がいるようだ。

 次に企画の力、それは着想だけでなく、仲間を吸引する魅力を普段の仕事から発揮していないといけない。また、同志を見抜く力、これが必要だろう。苅部・片岡の両氏は、雑誌「大航海」でも対談しているが、まさに学界で油の乗り切った、しかも外に発信するものを持っていることがわかる。

 次に実行力。これは、強さ・優しさ・抜け目なさが必要だ。斬新な企画は、返り血を浴びやすい。敵になる可能性の相手が出やすい。そこで、仲間にも論敵にも、優しさが必要だ。手心を加えるのではなく、武士の情け、というべきか、戦うマナーと言うべきか。また、きちんと締切が守られるよう、当初から抜け目なくストーリーを読んでおく必要もあろう。学生時代、ある頭のいい先輩に教えられた。大を動かすには、大が抱えている小をさりげなく、引っ張り込むのだ、と。

 具体的には、すっぽかしたり、放り出したりする大先生には、大切な友人や後輩・弟子を指名してもらい、両方に仕事をお願いするのだ。大先生は面子もあるし、義理もできて放り出せない。

 本書がそうして出来上がったかどうかは知らない。だが、序跋を書いた編者のお二人からは、切れ味と同時に優しさとタフさが垣間見える。こういう40代の研究者を中核に持つ学界は幸せな場だと想像される。

 
posted by 雑食系 at 00:19| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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