2011年04月07日

白石良夫「古語の謎」

 本を出す機会が多くなると、タイトルの付け方が気になるようになる。本の顔は、書型・タイトル・著者名・出版社名・装幀だから、非常に大事だ。

 特に、タイトルは、短く本の性格と魅力を打ち出さねばならない。最近のタイトルは饒舌なものが多い。散文的と言ってもいい。その点、白石さんの命名は、戦略的だ。語らないことで、読者を誘惑するのだ。

 小説やエッセイではよくやる手だ。古くは「源氏物語」だって、象徴的な巻の名「桐壷」「若紫」「幻」等々、コードを使って読者を謎から誘惑している。これが、「桐壷に住んだ薄幸の源氏の母の物語」とか「伊勢物語の若紫の歌のような運命の垣間見」では、どうしようもない。

 本書は、副題や帯文まで語り残す部分がある。「書き替えられる読みと意味」「古語はむかしから「古語」だったわけではない」。

 正面きった本当のこの本の中身は、「古語認識の歴史」と言っていい。江戸の国学で、古語への誤読も含んだ解釋が、学問の実態と変遷のドラマを教えてくれる。本書は、実は大学初年度の国文学の講義で行われるべき内容なのだ。

 教科書に長年携わってきた、白石さんならではの視点でもある。古典とは流動的なものであり、古典を立てることが、国文学者の大きな使命であることを、先達の勇み足の数々から説いてみせた奥の深い内容なのである。
posted by 雑食系 at 11:40| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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