2011年04月09日

渡辺浩「東アジアの王権と思想」

 学生時代、漢文学の先生が、著者の儒学研究を紹介して、東大政治学の人はやはり優秀ですね、と短いコメントを付けくわえたのを妙に覚えている。その先生はめったに他人を褒めない人だった。

 丸山真男の最後の愛弟子で、丸山が退官後も個人授業をやって育てた人だというのは、丸山が亡くなってから出た伝記で知った。特に丸山が注意したのは、日本のことを研究するとき、日本の物の見方だけで判断しては危うい、という点だった、と言う。

 本書は、そくらく著者の仕事の中で、最も引用されることが多いものであろう。
1 江戸幕府は、なぜ中国・朝鮮のように欧米の開国要求を戦争ではねつけようとしなかったのか?
2 漢字文化圏=東アジアで学問や知識人の在り方は、なぜ日本だけが異なるのか?
3 明治維新=進歩史観は、中華思想をどう打破したのか?
 こうした本書の問の出発点はやはり丸山の注意をきちんと守ったうえで、解くべき重要な問題を設定していたわけである。

 「比較する=他者の視線を意識する」という開かれた態度において、広く「文化」というものを考え、現在の「日本」という場所に住まうわたしたち自身のあり方を問い直す。日本文化は決して他の文化や文明から孤立したものではなく、むしろその発端から現在にいたるまで他の文化との深い関わりのなかで成り立ってきたものだ。文化交流の歴史こそが日本の文化の歴史だったといってもよいのだが、わたしたちはそうした流れを「いま・ここ」で改めて学問的に実践しようとするべきなのだと教えられる。
posted by 雑食系 at 10:25| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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