2011年04月25日

戸部良一「逆説の軍隊」

 中央公論新社から出た、シリーズ日本の近代の一冊である。戦前の帝国軍隊の興亡を「逆説」で集約した。司馬遼太郎ではないが、あれだけ国家の近代化の牽引車であった旧軍が、太平洋戦争時には、非合理の極みの戦争を行ったのはなぜだろう、という問いは、大きな課題だ。

 どうして、そんなに急激な変化を遂げてしまったのか。「坂の上の雲」の後、司馬遼太郎がノモンハンを小説化したかったのはよくわかる。彼は、満州・本土決戦の戦車隊にいた。

 さて、本書の答えはというと、これは日本の旧軍だけにあてはまるローカルな問題ではないのだ、というものだ。戸部氏によれば、軍隊は本質的に「逆説」を抱えている組織なのだ。

 守るべき命を犠牲にして戦う行為そのもの、つまり戦争は非合理的な行為だ。しかし、軍隊という組織は、その非合理な行為を、いかに合理的に集団で行うかを要求される。軍隊という組織そのものが持つ本質的な矛盾を、「逆説」で集約した筆者の目は、一流の歴史家の目だ。

 いつかは失われる命を、必死で守ろうとする人間存在の「逆説」が軍隊には集約されている。軍事の研究をする者なら、そこに思いを致さないで、ただ賛成・反対を唱えても、何の建設的な議論にもならない。
posted by 雑食系 at 22:55| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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