2011年04月27日

楠元六男「芭蕉と門人たち」

 芭蕉と門下の俳人の伝記と作品の入門書といったら、まずこの本を挙げる。蕉門俳人伝なら他にもあるが、芭蕉との関係に焦点を当てたものは少ない。

 蕉門の転換を切り口に、芭蕉自身の変化を見る視点の据え方が、楠元さんらしい着実な実証を以て語る方法にぴったりくる。

 もうひとつは連句の付け筋にきちんと触れて解説してくれている点もありがたい、的確な例を挙げ、平易に語ることが難しい対象だけに、入門書としての価値が高い。

 ただし、本書の限界をひとつだけ、どうしても「去来抄」の記述によららければならないケース、去来と凡兆の俳風の比較など、「去来抄」自身の記述の検討を加えなければ、公平な評価は難しい問題が残るのである。

 「去来抄」というテキストは、芭蕉をキリストや釈迦のようにその言行録を記して、カリスマ化すると同時に、それを一番理解していたのが他ならぬ去来自身であったように読めるよう書かれている。このことを一度疑ってかからないと新しい研究は生まれてこないのだろうが、資料の制約が壁となって立ちはだかる。

 「去来抄」は虚子が珍重したため、近代俳人にも大きな影響を与えている。問題は大変本質的かつ難物であるが、大きな魅力もある。
posted by 雑食系 at 07:50| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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