2011年05月02日

谷川 渥「廃墟の美学」

 廃墟ブームだそうである。専門のツアーまである、という。災禍の結果である廃墟に、なぜ美がかんじられるのか。なぜ、人は廃墟にひきつけられるのか。

 本書は、廃墟をめぐる言説と表象の経緯から、その秘密を解き明かす。筆者は西洋美学の専攻。したがって、ヨーロッパの絵画・文学が考察の対象となる。筆者の立場からすれば「廃墟」の美学には、ヨーロッパ文化独自の表象の系譜があり、東洋・日本とは異なるという立場だ。

 確かに、建築そのものに対する概念が、欧米に比べて建て替えを前提とする日本では、その表象は異なってくる。また、自然観の違いもあって、日本の廃墟は、「夏草や兵ものどが夢のあと」であったり、「浅茅が宿」であったりする。日本の場合、自然とマッチした廃墟の表象が前近代までの伝統だったのだ。

 日本もようやく欧米型建築観が内面化し、本書のような、巻末に大量の日本語文献を収集できるほどの関心が堆積した。さて、今回東北の津波のあとをニュースで見るたび、あの光景は、「壊滅」の景である。廃墟は東西を問わず、「死」の寓意を伴う。しかし、そこに泥土に水仙や桜を発見して希望を得ようとする心性は、やはり日本独自のものなのかもしれない、と思う。
posted by 雑食系 at 08:34| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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