2012年06月10日

染谷智幸「冒険 婬風 怪異 東アジア古典小説の世界」

 木曜日・金曜日と、近世の蔵書形成と文学享受をテーマにした、研究会・シンポの発表を国文学研究資料館で聞く。期せずして焦点となったのは、神道関係書。これは古今伝授を中心に和歌ともつながり、近世の学問と文芸のつながりにおける重要なテーマでもある。

 特に川平敏文さんの、祐徳稲荷神社中川文庫の新出資料についての発表が、面白かった。やっぱり「江戸の文学史と思想史」には、神道・仏教を入れるべきだったかなあ。最近、研究上話をすると、特に神道やそれにかかわる学問・文芸の掘り起しやそれにかかわる話題が、よく持ちあがる印象。

 今度の近世の発表だと久岡明穂さんの発表がからむんですよねぇ。神道と。今後もちょくちょくこの手の発表はありそうですね。

 そんな折、染谷智幸さんから標記の著書を頂く。
 日本近世文学という学問編成なり枠組みを「外」の視点から問い直そうという、大きな試み。特に上記の問題と絡むのは、水戸光圀と斉昭の海神信仰の差異。江戸前期の東アジアの神媽祖信仰から、幕末の弟橘媛信仰への変化に、海神の外向性と内向性から、三教一致に江戸文化の可能性を見る。

 歴史学でも、渡辺浩氏の提言から、水戸学の用語である「幕府」なる呼称が排され、「公儀」なる呼称で江戸の権力構造を見直そうという動きが学界では定着しているようだが、同様に、染谷氏の問題意識と江戸の神道+学問編成の問題を絡めれば、大きな、かつ新しい構想の「文学史と思想史」が生まれ得よう。細部より、展開される構想を味読すべき書だと思う。
posted by 雑食系 at 16:39| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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