2011年01月10日

ロバート・キャンベル「Jブンガク」

 キャンベルさんの快進撃が止まらない。今年から読売新聞の書評委員も担当する。初回はなんと水嶋ヒロの「KAGEROU」だ。http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20110111-OYT8T00340.htmツイッターでも大騒ぎになっている。

 元々会話のウイットは素晴らしい人だ。NHKで若いころダンサーだったことを披露していたので、メールで「ダンサーだったんですね」と送ったら、「もうダンスはうまく踊れないんです」と返ってきた。テレビに出る前から、こんな感じだったので、コメンテーターをやっていても、二十年以上前から知っているこちらとしては、何の違和感もない。

 テレビの「Jブンガク」の収録も大変だった、らしい。英語の読みでトチッて、築地のスタジオまで、タクシーを飛ばして、一言だけ修正しに行ったりしたそうだ。ご本人曰く、「全く、大和ハウチュですよ。」

 さて、その「Jブンガク」は、今年度の近代版では子規がいいが、全体にみると、書籍化された昨年度版がいい。一押しは、冒頭の「学問のすすめ」だ。

 福沢の「読者一人として取り残すことなく」、「分限」という旧来語を、「努力次第」で「誰もが超えられる壁」とした、翻訳経験をふまえた表現の戦略の巧みさを明確・的確に解説する。

 この部分は授業で配って、福沢の父が藩の財務担当で経済都市大坂で活躍したこと、翻訳とは「架橋」であって正確な伝達ではないこと、こういう自学自習書を読む伝統は江戸時代後期にあったこと、福沢が実は娘を旧士族以外嫁にやろうとしなかった人物で、四民平等のスローガンには陰影があること等々を説明する。

 学生の反応で一番印象に残っているのは、「福沢って勝間和代の元祖だったんですね。そうえいば彼女も慶応出だ。」とか、「自由の押し売りは自由じゃない。」とか、「サンデル先生が言っている、幸福を数値で測る思想=功利主義の伝達者だったんですね。」といった秀逸なものである。

 こういう学習効果を生むのも、キャンベルさんの説明しすぎず、要所は衝くコメントに負うところが大きい。
posted by 雑食系 at 00:19| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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