2012年01月12日

大黒屋光太夫資料集

必要があって、「北海異談」という実録を読んでいる。レザノフ一件に刺激された巷間の関心に当て込んだ際物だが、なかなか本格的な作品である。

冒頭は、林子平の「海国兵談」を引いて、ロシア脅威論を展開しているし、大黒屋光太夫の漂流とロシア渡り記事も詳細だ。

もちろん「講釈師見てきたような嘘をいい」を地でいくような文章も多い。ロシア船の出没を警戒して出動する際、活躍するのが藤堂や小笠原だというのは、近世軍記の世界を前提に敷衍した話で、もっともらしく嘘を展開している。光太夫がエカチェリーナ女王に向かって、日本の政体を滔々と述べる件など、講談の聞かせ所のようだ。

しかし、光太夫が、ロシア貴族の娘と友情を結んだり、ロシアの遊郭に入ったりする記述は、実際にあったことだったので、一概に根も葉もないものと切り捨てられない。そういうことが言えるのも4巻に渡って光太夫関係の聞書等を集成する本書があってのことだ。

特に昌平黌とその周辺や、南畝などの知的ネットワークは、この手の情報を確実につかんでいたことがわかる。編者の山下恒夫氏による「大黒屋光太夫」(岩波新書)は、これらの博捜をふまえてのことでこれまた読ませる。

こういった聞書と、「北海異談」のような創作を含む実録とを結ぶ「線」が見えてくれば、見通しがよくなるのだが。。。
posted by 雑食系 at 21:34| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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